ジャーナル

WoodJournal
【開催報告】2021/9/14 木造施設協議会 総会+SWING講演会
WoodJournal

ジャーナル

【開催報告】2021/9/14 木造施設協議会 総会+SWING講演会

「連携と協働」の視点で木造施設のこれからを考える

【開催報告】2021/9/14 木造施設協議会 総会+SWING講演会

話し手:木造施設協議会 代表理事 相羽健太郎・事務局 藤村真喜 SWING 共同代表 金山大氏・小泉宙生氏

【開催報告】2021/9/14 木造施設協議会 総会+SWING講演会

兵庫県丹波地域で木造のドコモショップを2店舗、運営事業者からリピートで設計したことを当協議会でもご紹介している大阪の設計事務所SWING。多様な用途の建築の新築、リノベーションを手掛けるSWING共同代表金山大さん、小泉宙生さんから「連携・協働」というテーマでお話しを伺った。
(本記事は2021年9月14日に開催した木造施設協議会の総会の際に行った講演のレポートです)

仕事の紹介、設計施工の連携、共同代表の組織運営

金山さんは組織設計事務所で集合住宅や福祉施設を、小泉さんはアトリエ設計事務所で住宅、木造の設計を、二人で吉野の材木店での設計活動を経て2006年にSWINGを設立。業界の関係会社からの仕事の紹介や設計施工の連携、そして共同代表での事務所の運営はどのようにされているのだろうか。

SWING 共同代表 小泉宙生氏(左)と金山大氏(右)

SWING 共同代表 小泉宙生氏(左)と金山大氏(右)

信頼し補完し合い、多様な仕事で実現すること

建築業界は今や、住宅、店舗、オフィス、福祉といったように設計も施工も細分化されている。合理的という意味では専業の方がよいのかもしれないがSWINGのスタンスは違う。未経験ジャンルの仕事であっても誰と組むか、例えば医療機関を設計したことがない場合でも得意な工務店と組み、得意、不得意、専門か否かではなくクロスオーバーして設計や施工、メーカーが連携していくことが新たな仕事の入り口になるという。その連携の前提として勉強会などでお互いを深く知り、信頼関係があるかどうかが大切だと小泉さんは言う。小泉さんはMs建築設計事務所の出身で、Msの三澤文子さんは阪神淡路大震災の後にMOKスクールを始められ、現在も続けられていることはよく知られている。学びたいという目的で集まった仲間と価値観を伝え合い、コミュニティを見てきたSWINGだからこそ、仕事の多くが紹介経路なのも頷ける。

小泉宙生氏

小泉宙生氏

またその信頼関係を大切に連携するというスタンスは組織運営にも共通している。
SWINGのビジョンは「つながりの場をあなたと紡ぐ」。これはHPを改めることを機に社員みんなで考えたそう。スタッフとのビジョンワークや定期的な社内勉強会、社内面談、BIMの導入やアプリを使った情報共有、社内の取り組みも旧態の設計事務所とは様子が違っている。金山さんは言う。「スタッフはゼネラリストとして広範囲の知識を身に着け統合できる力を身に着けてほしい。先のことを考えると今、BIMを導入することでスタッフが次に転職するときにも役立つかもしれない。」共同代表の2人はお互い意見はよく聞くが担当物件は分担、時には若いスタッフのセンスも取り入れながらみんなで考えるのがSWINGの仕事のやり方だ。店舗などは特に若いセンスも必要だとaround50の二人は微笑みながらとても謙虚。

「人はみな自分の主観で世界を捉えている。それがそれぞれの善、悪、信念になるのだけれどもみんな違う。」違うことを認めた上でできるだけコミュニケーションをとり、できるだけ多くの知恵を入れる設計スタイル。「担当者が一番情報を持っているのだから誰よりも高度な解析ができるはずなので自信をもってやるべきだ。」と良い意味でスタッフに委ねている。

今、施設建築に木を使う意味

木の扱いに詳しいお二人に建築に木を使うことについての意見を聞いた。「国産材は山から材料調達から乾燥、製材、加工まで時間の面でもコストの面でも高かったハードルが近年、随分下がり、設計者が使いやすくなった。地元の職人さんが関わり建築が地元のものになる仕組みづくりができるのが木造。」という。日本全国、大工さんがいてメンテナンスができる技術で地域にお金が落ちるという意味でも汎用性が高い構法といえる。

ドコモショップ丹波篠山店 https://swing-k.net/works/docomoshoptanbasasayama設計:スウィング 写真:冨田英次

ドコモショップ丹波篠山店 https://swing-k.net/works/docomoshoptanbasasayama

ドコモショップ丹波篠山店 https://swing-k.net/works/docomoshoptanbasasayama設計:スウィング 写真:冨田英次

ドコモショップ丹波篠山店 https://swing-k.net/works/docomoshoptanbasasayama

また身体的に木が良いという感覚はある人が多いが、さらに近年は持続可能性や環境問題の意味でも施設を運営する事業者にとってビジネス面でも木を使うことが受け入れやすいものになった。一方で自然素材は手を入れることで風合いが増して良くなっていくとはいえ、シェアハウスや店舗など手軽であることが重視される用途では事業者とよく相談して扱いについても共有し、木を使ったことで「ひどい目にあった」ということがないように木を扱える人を育てていかないといけないと金山さんは言う。

金山大氏

金山大氏

クライアントが設計事務所に頼んでいるということは、ぱっと検索して手に入るものの寄せ集めを望んでいないことは大前提である。1~2年で回転するシェアハウスは出て行った人が次の入居者を紹介してくれる良い流れができている。チャレンジとリカバリーの繰り返しがSWINGの次につながる仕事の進め方だ。

common room UMEDA / COWORKING SPACE https://swing-k.net/works/common-room-umeda 設計:スウィング 写真:冨田英次

common room UMEDA / COWORKING SPACE https://swing-k.net/works/common-room-umeda

協働して挑戦する。クライアントとともに

施工者選定のプロセスでもこのように問題提起する。「入札という仕組みは価格が適正かどうかを判断する上でのクライアントの不安が背景にある。ノウハウも技術レベルも違うのにお金だけで判断するというのは本質的ではない。」そういう視点でクライアントとよく話し合い、基本設計段階で数社の施工者をヒアリングし1社に絞って実施設計の中でのコストの修練をする方法も模索しながら進行中だそう。

SWING のオフィス写真:大竹央祐

SWING のオフィス

特別講演会に参加した代表理事の相羽健太郎

特別講演会に参加した代表理事の相羽健太郎

木造施設協議会 事務局 藤村真喜

木造施設協議会 事務局 藤村真喜

今回「連携・協働」をテーマにお話しを伺ったが、一貫して人との信頼関係を大切に誰かにしわ寄せがいくことがないような配慮し、15年の間に模索し構築してきた組織運営、丁寧にクライアントの不安を掬い取りながらかつ挑戦を続ける設計の姿勢、建築設計事務所のみならず、さらには建築業界に関わらず、多くの学びがあったのではないだろうか。

文責:木造施設協議会 事務局 藤村真喜

木造施設協議会について