ジャーナル
【開催報告】公民連携セミナー第一回『地域工務店の公民連携』
地域や事業への想いの継続が事業の継続につながる。地域工務店の公民連携を多様な事例から学ぶ
話し手:登壇:國廣純子氏・丸山勲氏・大野哲也氏・遠藤誠氏|進行:相羽健太郎
2022年2月3日、公民連携リレーセミナー第1回を開催しました。今回はオープンセミナーということで工務店、設計者だけでなく行政、金融機関、コンサルティング会社、木材店、土木会社と業種を超えて木造施設協議会会員以外からも非常に多くの方にご参加いただきました。
タウンマネージャー國廣純子氏からの公民連携ガイダンス
まず、青梅市とあきる野市のタウンマネージャーであり各方面で精力的に活動されている國廣純子さんより中間支援者の立場から公民連携のガイダンスをしていただきました。
公民連携は直接的には財源の節約や民間のノウハウを活用することにメリットがあるが、結果として質が向上し、魅力ある地域づくりのための協働であるーーという導入から、具体的事例のご紹介とともに、投資の配分、単独ではなく地元の声をまとめて行政に伝える公益性のあるチームづくりをしていき積極的に地域の企業も公益事業に関わっていく方法などをお話いただきました。
工務店業を営みつつ、法律・税金などの課題解決にNPO法人を設立した丸山勲氏
続いて静岡県掛川市「NPO法人かけがわランドバンクの取り組み」についてかけがわランドバンクの理事長であり、地域工務店エフ・ベースの代表でもある丸山勲さんにお話しいただきました。地域工務店エフ・ベースは「豊かな暮らしを創造する」をモットーに地元の木を使い、地元の職人で地域の風景をつくることを大事に住宅を施工されています。そういった家づくりをする中で、日本の住宅寿命の短さ、30%近くの空き家率という社会事情を鑑み、一生懸命自分たちが建てた家が消費されるのだとしたら悲しく、新築は長く住まえる家の質について考えてこられました。と同時に既存の空き家による地域への負の影響を考えて空き家を利活用して地域に良い循環を生み出せないかという思いで空き家への事業展開を模索されました。その中で工務店だけでは解決できない法律、税金等の課題も解決すべく士業の方によるプロフェッショナル集団としてかけがわランドバンクを立ち上げられました。
市との協定以外にも産官学民連携(かけがわ粟ケ丘山麓農泊推進協議会、大学、高校)を推進し、学生コンペによるストリートファニチャープロジェクトや民泊、農泊、コワーキングスペース、地域交流スペース整備など仕掛けておられます。
かけがわランドバンク:https://kakegawa-lb.jp/
地域に根付いた大工工務店としての責任を全うし、災害復興のための応急仮設住宅を短工期で実現した大野哲也氏
埼玉県大野建設大野哲也さんからは災害復興に関する公民連携を中心にお話いただきました。大野建設では創業以来、地域工務店として地域に責任をもって家づくりをすること、地域守り、家守りできる人材の育成に力を入れてこられました。住宅だけでなく一般建築も手掛ける大野建設はJBN(全国工務店協会)や全国木造建設事業協会のトップとしても地域工務店を束ねる役目も担っています。BCP(事業継続計画)や全国木造建設事業協会での各団体との連携といった平常時の準備、連携を組織的に行っておくことで災害時にすぐに木造応急仮設に対応できるという仕組みについてお話いただきました。病院敷地内のコロナに対応する応急仮設病棟や、福祉施設敷地内の感染したケアラーの受け入れ施設を1か月程度の短工期で竣工させた事例をご紹介いただき、病院、社会福祉法人はそれぞれの管轄の部課が違っていても、建設に関わる都市整備部と全国木造建設事業協会との応答の中で公民連携が実現するというものでした。
(参考)新建新聞2020年10月30日号
大野建設:https://www.oono.gr.jp/
最後に相羽建設遠藤誠さんからはこれまで相羽建設で行ってきた公民連携として、住宅事業プロポーザル、民間事業提案制度、小中規模公園管理委託から東村山市の包括公園管理、パークPFIや行政組織への家具納入といった事例をご紹介いただきました。民間事業提案制度では採択に至らなかった提案が、のちに別の形で家具納入や公園管理の仕事につながっています。日頃の関係や前段の新しい取り組みが信頼に結び付き、どんな小さな取り組みも地域を良くしたいという想いが根底にあれば無駄にはならないというのが連携ならではと感じます。プレーヤーである社員としての立場から社内の理解の難しさを抱えつつ、すぐに利益にならず時間がかかる公民連携ではありますが、新しい仕事に挑戦し、奮闘しながら次の仕事、本業にもにつながっていくプロセスについての語りはリアルなものでした。
相羽建設:https://aibaeco.co.jp/
『地域工務店の公民連携』ー地域や事業への想いの継続が事業の継続をつくる
今回は各工務店の姿勢で具体的な事例をお話いただき、熱く、刺激的なものでした。内容や方向性は違えども、地域では中小の公民連携があること、価値観や土地への愛着でつながる連携、ひとりがちではなく得意分野のプロたちによる連携、そして何より地域や事業への想いの継続が事業の継続になることは共通していました。掘り下げると日常の小さな地域の困りごとには相談にのり、関係性を大事に、社会性や大義を大切に地域事業者として動くこと、新しい挑戦が次の仕事をつくること、持続的な事業や活動のためには大きな利益でなくてもビジネスとしても循環する枠組みや組み方をするという視点も今回の具体的事例から理解いただけたのではないでしょうか。
また何かしら地域の事業者が関わる木、住民が愛着を感じやすい木が地域での連携の上でひとつの鍵になる可能性も感じました。熱い想いをもった人々がつながり、地域の魅力を高めるきっかけにこのセミナーがなれば幸いです。
第2回目は青梅を舞台に、公民連携の事例をタウンマネージャー國廣さんより詳しくご紹介いただきます。
引き続き奮ってご参加ください。
公民連携セミナー2022|開催スケジュール
開催スケジュール|参加無料・各回のみも参加可能 ●第2回「中間支援者タウンマネージャーから見た公民連携」4月12日(火)13日(水)リアル開催予定
・東京都青梅市・あきる野市タウンマネージャー 國廣純子氏
自身の取り組み事例/民間事業者、行政へのアドバイス
・リアル&オンラインハイブリット開催/
1日目夜 懇親会/2日目 國廣さんアテンドによる現地視察(希望者)
●第3回 「行政担当者が取り組む公民連携」
6月開催※日程調整中 オンライン開催予定
・岡山県津山市 川口義洋氏/東京都東村山市 杉山健一氏
【公民連携リレーセミナー2022】
主催:木造施設協議会
後援:株式会社新建新聞社
参加申込フォーム・フライヤー
●参加申込フォーム(Googleフォーム)
https://forms.gle/gqjYG1ovjxQudRhX6
●フライヤーPDF
ダウンロードはこちらから▶︎ 『公民連携リレーセミナー2022』フライヤー