ジャーナル
【開催報告】施設見学とバリアフリーを活かした施設セミナーin名古屋
地域の設計事務所・工務店の強みを活かした木造施設事業のつくり方
施設名:「工場から家」|「木造倉庫兼事務所」|「インマヌエル名古屋キリスト教会」(愛知県名古屋市)
2022年11月29日(火)、愛知県名古屋市において「施設見学とバリアフリーを活かした施設」セミナーを開催いたしました。今回は、映画「パーフェクトワールド」のモデルになった車椅子の建築士・阿部一雄氏(阿部建設株式会社・代表取締役)をお招きして、誰もが暮らしやすいバリアフリーの社会の実現に向けて、実際の建物見学と共に、ご講演をいただきました。小雨が降る寒い中、協力いただいた愛知県建築士会・名古屋北支部のメンバーだけでなく、全国各地から設計事務所、地域工務店など総勢25名がご参加され、阿部社長のお話に耳を傾け、また活発な意見交換ができました。
築35年の町工場をリノベーション「工場から家」(設計/裕建築計画)
建物見学では3棟の建築を訪ねました。はじめに訪れたのは名古屋市内の築35年の町工場をリノベーションし住居に生まれ変わった「工場から家」(設計/裕建築計画・浅井裕雄)。設計者の浅井氏とオーナー様のお話しをお聞きしながら家と街とその中間領域である庭がつながり、ご家族が豊かな暮らしを営まれている様子をお聞きしました。
木造倉庫兼事務所(設計/伊藤倉庫一級建築士事務所)
2棟目は、木造トラスにより大空間を実現した2階建て倉庫兼事務所(設計/伊藤倉庫一級建築士事務所・伊藤睦子)です。
1階が自動車車庫(大きな中継車の格納とその周辺に附属機器の整備ができる空間)、2階が事務所スペースとなっている2階建の建物です。森林への配慮、室内環境の快適さ、炭素固定、コスト面などのメリットはもちろん、地域で仕事をする企業として、地域の循環や活力ある地域の継続に貢献したいというオーナーの思いから、“木造”での倉庫建築を選択されています。
1階・2階は木材と鋼材を組み合わせた梁(張弦梁)とトラスで、それぞれ8.48mのスパンを無柱で飛ばし大空間を実現。1階倉庫のハイサイド窓からの自然光を受ける部分を木部の表しで仕上げたり、真壁で柱のフレームを併せて強調するなど、木造の良さ・木が持つ魅力を活かした設計となっています。
木造の教会「インマヌエル名古屋キリスト教会」(設計/阿部建設)
そして最後に、木造の教会であるインマヌエル名古屋キリスト教会(設計/阿部建設)を見学させていただきました。設計は阿部恵彦氏。
名古屋市中村区の地で70年活動されてきたキリスト教会です。地域にひらかれた教会を目指し英会話教室に始まり、子供教室、読書会、音楽会、映画会と多様なイベントを開催されているそう。耐震性、温熱環境の改善、地域の方がより集まりやすくイベント開催が出来るよう、また礼拝も90人から120人が一同に集える礼拝堂を備え、SE構法を採用した木造施設です。
それぞれに使う方のバリアフリーや利便性を意識した建物になっていました。
工務店の強みを活かした木造施設事業の作り方
セミナーでは、「工務店の強みを活かした木造施設事業の作り方」と題してお話をいただきました。新築住宅減少が避けられない時代背景から、多品種・多チャンネル化の戦略を掲げていった経緯やその中で「バリアフリー」を位置付け、ご本人の体験から「特別」なものではなく「当たり前」である事を意識づける事の重要性を話されました。また延床500㎡規模の「中小規模施設こそ、工務店が取り組むべき」と地域との結びつきを意識したうえで、鉄骨造やRC造との比較において木造の優位性を話されていました。また最後には計画段階から竣工に至るまでのプロセスにおいては、事業主、設計事務所、工務店との関りについても参加者に投げかけを行っていただけました。
地域に必要とされる木造施設建築を目指してのディスカッション
後半は木造施設協議会の相羽代表理事がファシリテーターとなって、更に掘り下げた議論を参加された設計事務所、工務店も交えて行っていきました。今回ご自身の経験から社会にとって必要なバリアフリーについて阿部社長からお話がありましたが、それはその施設を利用する方々だけでなく、街並み、社会に開かれた大きなテーマであり、長く地元に必要とされる木造施設が出来上がっていくまでのプロセスにおいてもバリアフリーが求められるのではと感じてもらえたのではないでしょうか。