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【開催報告】2018/9/22 未来の保育を考えるセミナーin松原
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【開催報告】2018/9/22 未来の保育を考えるセミナーin松原

保育園舎と幼児の健康を考えるセミナーin松原

【開催報告】2018/9/22 未来の保育を考えるセミナーin松原

施設名:社会福祉法人あおば福祉会 みつばち保育園(大阪府松原市)
話し手:志村洋子氏+吉住とし子氏+菅家克子氏
設 計:㈲菅家設計室 菅家克子氏

【開催報告】2018/9/22 未来の保育を考えるセミナーin松原

2018年9月22日(土)、大阪府松原市のみつばち保育園にてセミナーを木造施設協議会・OMソーラー共催にて開催させていただきました。今回大阪府だけでなく、兵庫県、奈良県、滋賀県、山口県から総勢約30名の保育関係者、建築関係者が集まり、活発な意見交換が交わされ大変有意義なセミナーとなりました。

新しく建て替えられたみつばち保育園

会場となったみつばち保育園は公立の既存保育園を民営化する一貫で、新しく建て替えられ、2018年4月より再オープンいたしました。また今回のセミナーの講師は、同志社大学赤ちゃん学研究センターの志村洋子先生、園舎の設計者である菅家設計室主宰の菅家克子先生をお招きいたしました。

園舎に対する思い入れ

最初に菅家先生とみつばち保育園の吉住とし子園長から、既存の園舎の建替えの経緯や保育士の要望など新しい園舎に対する思い入れ等をお話いただきました。「明るい園舎」「住宅的な感覚」など幼児だけでなく、働く保育士の方々にとっても快適な保育空間を望まれていました。また実際に数ヶ月園舎を使用されて、(床材は地元大阪府産材のヒノキが使用され)素足で気持ちがよいだけでなく、キズも色の経年の変化も大切な自然の物の大切さを伝える保育の一貫である点、トイレのにおいが少ない点、ホールでみんな集まって活動ができる点等のお話もいただけました。

視察を通して、実際に木造の保育園舎にふれる

その後実際の園舎の中を見学させていただき、保育室と保育室の間にあるトイレでは、参加者からも「保育室と同じ感じで、これはとても良い!」との感想がありました。また「無垢のヒノキの床のお手入れはどうですか」などの保育士の日常業務についても保育関係者同士で質問などもありました。

幼児の耳の発達と園舎の室内環境の音との関係

見学後は「子供の感性を育む保育空間とは」と題して志村先生から幼児の耳の発達と園舎の室内環境の中の音との関係について、大変貴重なお話をいただきました。14歳位までは大人と違い子供の耳については発達途中で、喧騒の中では幼児は特に保育士の声が聞き取りにくいのが実情との研究結果や、喧騒の多い園舎で働く保育士の聴力が実は低下してしまっている事も研究データで示していただきました。もともと声楽家である志村先生は、童話を実際に歌っていただき、幼児に対してどのような歌い方、声かけ方をする事が大切かという点を判りやすく説明いただきました。参加された多くの保育園長は納得されているようで日常の保育では知らないうちに大きな声になってしまっているようでした。

室内環境をどう整えていくか

次に木造施設協議会の事務局の柿崎(兼OMソーラー施設建築部長)より保育園舎、診療所、高齢者施設などの室内環境(温熱、空気室、気圧、臭気・・)と健康や行動にどのような影響を与えているか等についてお話させていただきました。具体的な頭痛などの症状の要因のひとつが、室内環境にある事などがわかり、室内環境をどう整えていくかが大切だと認識をしてもらえました。

フリートーキングで意見交換を

最後にフリーディスカッションでは普段聞くことができない事も質問としてあがり、同じ保育関係者の方々は、日常多くの課題と直面しているが見えてきました。特に働く保育士とのコミュニケーションについてはとても大切で、みつばち保育園ではセミナーの翌日から保育士・職員みんなでキャンプへ行くとの事で、その部屋割り、懇親会の座席なども工夫されていました。また日常の中で一人ひとりと気軽に話ができるスペース等についてもお話いただきました。また吉住園長からあるエピソードも披露されました。既存の園舎の3歳児が「何で園舎を壊して新しくするの?」という素朴な質問があったそうです。大人にとっては建物の老朽化や園児の増員、民営化など理由がありますが、幼児にとっては愛着のある既存の園舎から新しい園舎へ移るのは理解できないのかもしれません。幼児にとって既存の園舎から新しい園舎へ移るという環境の変化は、ストレスを感じたり、馴染めない場合も多々あると聞きます。そこで吉住園長は積極的に工事中に重機で行う工事や大工・職人による手作業を園児に見せながら、応援してきたそうです。一般的には危険だからと言う理由で、園児を工事から遠避ける事がよくありますが、逆に積極的に関わりを持ちながら、新しい園舎へと園児の気持ちを移行させていったとの事です。

今回参加された方々からは、日々保育業務で忙殺されているが、でも実際には様々な課題があり、それをなんとか解決していきたいという強い思いがあり、それをこのようなセミナーや勉強会が多くあれば、ともに考えていけるので大変ありがたいという意見や、建築関係者からは、建築セミナーはよくあるが、事業主(保育園舎、福祉施設、診療所・・)側の直接話が聞けたり、建築と健康などの専門家の話を聞く機会はほとんどないので、とても貴重な機会となったなどの声もありました。これからも木造施設協議会では事業主に向けて各種セミナーを開催してまいります。

文責:一社)木造施設協議会事務局

セミナー開催日:2018年9月22日(土)

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