ジャーナル
【開催報告】2017/10/10 大工技術の粋でつくる、美しい木材加工場へ
秋の信州で木造施設見学会・セミナーを開催しました
施設名:北沢建築 木材加工場(長野県上伊那郡箕輪町)
設 計:意匠設計:Ms建築設計事務所 構造設計:稲山正弘氏
施 工:株式会社 北沢建築
地域の材と大工職人にこだわり、厳密な構造計算のもと、「シンプルで美しい」木組みが実現した木材加工場は、地元の人のみならず見る人を惹きつけます。その加工場では、日々お客様のために地域材が大工によって加工されています。まさに地域循環を実現している木材加工場を、長野県箕輪町にたずねる施設見学会とセミナーが、2017年10月10日に開催されました。
地域の木材でつくる圧巻の大空間
今回、見学に訪れたのは北沢建築の木材加工場。関西を拠点に長く木造建築をリードしてきた建築家の三澤文子さんが設計・北沢建築が自社の大工とともに施工を担い、2010年に完成しました。
一番の特徴は、標準的な寸法の地域材を組み合わせて架構をつくり、樹状トラス構造として、建物の内部に柱を設けずに18mという大スパンの空間を実現していること。
手刻み加工による木材を用い、設計の知恵と工夫、大工職人の技によって美しい木材加工場がつくり出されています。
使用されている材は全て長野県産材。伐採が行われる山から乾燥や製材・検査が行われる木材センター、そして刻みが行われる北沢建築まで、産地から加工が行われる場所までが全て近いことで、CO2の排出量もとても小さくなります。
加工場の設計にあたり、三澤文子さんは構造設計を東京大学准教授の稲山正弘氏に依頼。「ここで地域の人が結婚式をできるくらいに“エレガントな空間”にしてほしい」と話したのだそう。
この木材加工場がつくられてから7年。
北沢建築では地元・箕輪町を中心に、木造の商業施設を手がけることが多くなり、家づくりを考える地域の人が加工場を訪れた時に、そこで働く大工さんの姿を見てこの空間に触れることで、木造の魅力や職人技術の粋を感じることがよりできるようになったのだそう。
加工場の建築前と後で工務店の在り方にも少しずつ変化が起きていました。
木造施設建築への実践を学び合う場
木材加工場の見学の後、会場を移して木造施設セミナーも開催されました。
三澤文子さんからは「地域でつくる木の建築」と題して、今回の加工場を含めて木造施設の実例をご紹介いただきながら、地域材や職人を活かしながらどのように木造施設の設計に携わっているのかをお話しいただき、北澤社長からは、木材加工場ができてからの変化や実践、地域での受注の仕組みなどをご紹介いただきました。
さらに、近年急増している「企業内での木造保育施設」への協議会事務局からの仕掛けについてや、協議会に参加する工務店や設計事務所からの各地での実践活動の報告会も。
木造施設の今と未来に向けた可能性を各社が学び、実践していける内容盛り沢山の濃密な一日となりました。
地域の人と材でつくる「木造施設」で地域循環を
木造施設協議会は、地域施設建築に取り組むネットワークとして、事業者や設計事務所、工務店、企業や団体と行政の連携をはじめ、変化する時代の中で、木造施設を通した地域循環・地域貢献を実現。垣根を超えた資源共有・情報交換を進め、活動を広く発信していきます。
今回のような協議会会員が参加する施設見学会やセミナーも定期的に開催いたします。活動への参加にご関心のある方は、ぜひ協議会事務局までお問い合わせください。