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先進的福祉サービスと建築の居心地でつながる効果(3)
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先進的福祉サービスと建築の居心地でつながる効果(3)

先進的福祉サービスと建築の居心地でつながる効果(3)

施設名:トータスフォレスト(栃木県)
話し手:中山大輔建築設計事務所 中山大輔氏

先進的福祉サービスと建築の居心地でつながる効果(3)

話し手は設計者の中山大輔さんに変わります。今回は事業者とのトークということから、建物の内容よりも木造を設計するようになった経緯、経営的な視点で木造施設のことをお話いただいています。

施設を設計するきっかけ

8割が住宅で施設は2法人とお付き合いがある。施設を設計するときには住宅の延長であることを意識している。施設5、6棟続けて関わっているきっかけになったのが茨城育成園の慶育会。大手の設計事務所が法人に関わっていたが、理事長が設計した住宅の見学会に参加したことがきっかけでもともと建っていた鉄筋コンクリート造の施設の建て替えで相談を受けた。

老朽化した鉄筋コンクリート造の既存建物

老朽化した鉄筋コンクリート造の既存建物

交換部品がなく修繕できなくなっていた既存設備

交換部品がなく修繕できなくなっていた既存設備

鉄筋コンクリート改修案件から木造新築へ

施設調査をしたが、増築が繰りかえされ、鉄筋コンクリート造と鉄骨造が渡り廊下でつながっている状態。雨漏り、白アリ、施設の老朽化していた。設備の更新ができない状態で改修すると費用が増大化するということで、今後、鉄筋コンクリート造でよいのかということが課題になった。旧耐震基準で耐震改修できないことが調査で判明して木造化の後押しになった。鉄筋コンクリート造、鉄骨造では設備は大規模化して維持管理が難しい傾向がある。耐震、防火性を木造は懸念されることが多いが説明をすると納得してもらえる。

ユニットプランがつながる茨城育成園※

ユニットプランがつながる茨城育成園※

住宅の延長で設計する

1000㎡以上を大規模と呼んでいるが、1棟あたり500㎡以内にして許容応力度計算を逃れ、離隔距離をとって延焼線を逃げるという配置計画。
福祉施設はユニット化進んでいるので分離が可能。1ユニットは6から7人の大家族程度の規模で、後で転換できるように考えて作られている施設。コンペで大手組織設計事務所は鉄筋コンクリート造の提案だったのでこちらの案が新鮮に受け取られ、受注した。木材を多用しているわけではないが、在来軸組工法。LDK、階段、住宅のような設計。サッシもそれほど頻繁にメンテナンスがあるわけではないので木製サッシも使っている。
用途上、ホールのような大きな空間がでてきるが、木造として無理のない構造を考えると柱がでてくるのが用途上ネックだったが説明で乗り越えることができた。

ユニットになったプラン LDK部分※

ユニットになったプラン LDK部分※

ホール※柱は説明が必要だったが、イベントの飾りつけ等に上手に活用されている

ホール※

木造施設のリピート

同法人から依頼を受けた次の施設は障がい者グループホームで、こちらは構造を比べることなくはじめから木造で話があった。500㎡以内だと内装制限以外特に問題ない。事業規模も500㎡以下に納めるようにした。この事業はコンペでなく指名でなく受注。
木造で4棟くらいつくった。給食センターは防火の関係で鉄骨だが、木造に理解があって事業者がリピーターになったという事例になる。

木造施設のリピーターになり2施設目の「あんずの里」を開園※

木造施設のリピーターになり2施設目の「あんずの里」を開園※

地域交流スペース※

地域交流スペース※

共生型福祉施設 トータスフォレストの設計

幸知会との関りはトータスフォレストの前にリライフの相談からである。スパン10m飛んでいるので鉄筋コンクリート造で耐火構造だが内装は木質化した。トータスフォレストは共生型福祉施設なので、規模とリライフでの木質化が気に入ってもらって木造になった。
異なる事業の間は共有部分をつくった。各事業ごとに法適合する必要があるので、プランをどうするか悩ましかったが各事業ごとに必要な便所はそれぞれつくるなど個別に法的には完結している。出入口を共用しているからそれぞれがテナントであるという説明をした。
ファサードはレッドシダー貼りだが表以外はメンテナンスのことを考えてガルバリウムで覆っている。
歩行特化型デイサービス部分は機材があるので床はシート張りだが木造の雰囲気が伝わるように配慮した。中庭を介して各事業に交流が生まれるというのが特徴的である。

鉄筋コンクリート造の内装木質化 「リライフトータス」※

鉄筋コンクリート造の内装木質化 「リライフトータス」※

基本は無理をしない在来工法。

トータスフォレストでは大スパンをとばす部分はトラス梁を用いた。基本は在来で無理するところは大断面集成材かトラス。先進的な構造はしない。
2施設目のトータスラフォーレは木造。在来で飛ばせる無柱でいけるぎりぎりの寸法で事業が成立することがわかっていた。就労継続支援B型事業所の中でめだかを室内で育てるということで光が入るようにした。

基本は在来軸組工法でスパンがとぶ部分だけトラス梁を使用

基本は在来軸組工法でスパンがとぶ部分だけトラス梁を使用

木造2施設目の「トータスラフォーレ」※

木造2施設目の「トータスラフォーレ」※

これからの時代、小さくビジネスに木造はフィット

木造の施設は要求されていることが多いと感じている。これから大きく経営していくことは難しく、小さな規模で経営するときに木造は良い。
人口がピークアウトするときに小規模なビジネスを展開するときに持続的な経営を考えると木造を売り込むチャンスがあると考えている。木造にデメリットを感じていることはない。

文責:木造施設協議会
建築写真※:藤本一貴

木造施設協議会について