ジャーナル
第2回公民連携リレーセミナー2022③
話し手:株式会社まちつくり青梅 國廣純子氏 田中志緒利氏 栗島健氏
「公民連携リレーセミナー2022」第2回・2日目は、実際にアキテンポ不動産の仕組みを利用して開業に至った店舗を中心に、青梅の街を散策する街歩きを開催。株式会社まちつくり青梅の田中志緒利氏と栗島健氏による解説で、公民連携の実例をリアルで体感できる機会となりました。
実際に街を歩いて感じたことは、街の強み、オーナーさんの魅力のたくさんつまった唯一無二のお店ばかりということ。マニュアルのない街づくりだからこそ、開発的な街興しと一線を画す持続可能な実例を視察することができる機会となりました。
ネッツたまぐーセンターに集合!
以前は市民会館として利用されていた建物の跡地に2019年に開館したネッツたまぐーセンター。生涯学習施設として、地域交流が行われています。
からだ解決堂
田中氏・栗島氏
もとは酒屋兼コンビニを経営されていた後、子ども洋品店として貸し出されていた建物をアキテンポ不動産で紹介していました。医学療法士の浅見さんから「病院に通っていても良くならない方や、スポーツをされている方のケアができる場所を」という声をいただき、開業へとつながりました。
からだ解決堂ホームページはこちら
青龍 Kibako
昭和初期に建てられた看板建築の建物は、国登録有形文化財となっています。1階はカフェ、2階はゲストハウスとなっています。
cafeころん
クラウドファンディングで100名以上の支援者と50名以上のDIYボランティアによって改修された古民家レンタルカフェです。
「いつかお店を持ちたい!」という方が1日カフェ体験をされています。
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Jihan de マルシェ
おうめマルシェの実行員も務めているcafeころんのオーナー久保田さんが、コロナ禍で売上の落ちてしまった事業者仲間と一緒につくった自動販売所です。
青梅麦酒
元は木材屋だった店舗を昭和20年前後に化粧品店として営業されていました。8年ほど空き店舗となっていたところを地元の酒屋の店主が青梅産のクラフトビール店を開きたいと開業に至りました。リノベーションの設計を西沢大良建築設計事務所+芝浦工業大学西沢大良研究室が手がけています。
改装にあたってはクラウドファンディングも実施され、青梅の中心市街地の活性化に向けたお店づくりとして、まちつくり青梅や國廣純子さんも尽力をされていました。当時の様子がクラウドファンディングの告知ページでも紹介されています。
中心市街地活性化の起爆剤!
古き良き街並みが残る東京都青梅市からオリジナルクラフトビールを発信!
家具工房バトラー
第一回目のアキテンポ見学会に参加され、元印刷工場だった物件を一目見て気に入られました。工房と併設したショールームは、名前の由来にもなっているバトラー(執事)のように利用者の方に寄り添う場となっています。
家具工房バトラーのホームページはこちら
ナミオ珈琲
オープンしたばかりの焼きドーナツとコーヒーのお店です。長い間「カフェをやってみたい」と物件を探されていたオーナーの渡辺さんがアキテンポ見学会に参加され、この場所に決められました。
渡辺さんは青梅の地酒澤乃井を製造する小澤酒造でも働かれていたことがあり、澤乃井の酒粕を使ったドーナツがおすすめです。
EM Designs
築80年以上の古い看板建築だった建物は元はお弁当屋さんでしたが、2019年にWEBデザインオフィスとしてオープンされました。外観はそのまま活かした建物を、オーナーの齋藤さんご自身でデザインし、リノベーションされました。
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6月ハウス
現在も防空壕の残されたユニークな物件は、アキテンポ不動産で扱っていた物件とは異なりますが、古民家を再生し、イベントやワークショップが行われています。
6月ハウスのホームページはこちら
青梅織物工業組合の建物群
國廣氏
旧都立繊維試験場(現シネマネコ)・青梅織物工業協同組合本館・旧発券倉庫・旧織物加工工場(現さくらファクトリー)といった、主に昭和初期に建築された建物群。青梅を代表する産業であった織物産業の歴史を今に伝えるものとして、この4棟が国登録有形文化財に登録されました。
現在はシネマネコを中心に地域内外から多くの人がこの場を訪れています。
さくらファクトリー
原糸を織り機にかける前のサイジングのために建てられた工場は、現在工房やギャラリー、店舗として作家さんに利用されています。
シネマネコ
木造平家建ての洋館は、当初東京府立染織試験場出張所として建てられたと推測されています。現在地へは昭和22年に移築。
建物を活かして映画館として改修され、かつて映画の街として栄えた青梅に、約50年ぶりに映画館が復活しました。都内で唯一の木造映画館です。
取材後期
青梅は中央線の終点というイメージこそあったものの、訪れたのはこれが初めてでした。郊外らしい長閑な雰囲気の中に文化的な営みを感じる街は、繊維業が盛んだったという歴史からも、人の手で文化や歴史が構築された跡が随所に見受けられます。映画看板やレトロなお店の外観も残されており、まるで映画に出てくるような魅力的な街です。
アキテンポ不動産は、開業したい人と、ここで開業したいと思わせる街と建築があるからこその事業で、古い街並みの残る青梅には若い層にハマる魅力を感じます。街なか居住の促進ということを事業の目的として掲げられており、そのような層にどう知ってもらうか、どうやって訪れてもらうか、どうやって開業して街に住んでもらうかという目的までの道筋が明確です。
街に馴染み深い建築に新たな別の役割を持たせることで、街の魅力を内外に発信し、賑わいを創出している実例。街の方同士も「青梅で開業する」という共通の価値観で繋がっているところが素敵だなと感じました。
これからも多くの人が青梅を訪れ、街がさらに賑わっていくことが楽しみです。
(文:木造施設協議会事務局|相羽建設 中村桃子)