ジャーナル

WoodJournal
【開催報告】木造施設協議会 2023年 年次総会+木造園舎・製材所 視察ツアー(1)|2023/7/21-22
WoodJournal

ジャーナル

【開催報告】木造施設協議会 2023年 年次総会+木造園舎・製材所 視察ツアー(1)|2023/7/21-22

施設の木質化が業界全体のトレンドになりつつある中で、協議会が関わる事例紹介や活動報告

【開催報告】木造施設協議会 2023年 年次総会+木造園舎・製材所 視察ツアー(1)|2023/7/21-22

話し手:木造施設協議会 代表理事 相羽健太郎・木造施設協議会 事務局 藤村真喜

【開催報告】木造施設協議会 2023年 年次総会+木造園舎・製材所 視察ツアー(1)|2023/7/21-22

2023年7月21日(金)・22日(土)、兵庫県姫路市・宍粟市において木造施設協議会の年次総会と保育施設・製材所視察ツアーを開催いたしました。
全国各地から設計事務所、地域工務店など総勢19社25名の方にご参加いただき、木造施設や法人事務所、工場、商業施設の木質化が業界全体のトレンドになりつつある中で、協議会が関わる事例紹介や活動報告、今後のビジョンを共有する会となりました。

初日は協議会顧問のお一人である三澤文子氏による特別講演をいただくとともに、2日目には三澤氏が設計、山弘が施工をした木造保育施設「こども園『宍粟わかば』」、上林建設の木造事務所、日本で一番小さなJAS認定工場「しそうの森の木・製材工場」を視察させていただきました。

年次総会と視察ツアーの様子を、全3回にわたりご紹介!
第1部として、木造施設協議会 運営部が行った事例紹介や活動報告についてのお話をまとめました。

木造化・木質化の業界動向について

報告:木造施設協議会事務局 藤村真喜氏(スタジオノラ)

日本のみならず世界中において木造の高層化を各社競い合っているような状況ですが、そもそもなぜ高層建築物で木材を使用する必要があるのか、あらためて問い直している時代に差し掛かっています。
高層ビルや純粋な木造建築に対し過度に焦点を当てる必要はなく、木材が使いやすい機会やプロジェクトにおいて、低層建築物や非木材を組み合わせたハイブリッド構造における木材の需要を促進すべき…という認識に移り変わっているように思います。

木質化の業界動向について発表する事務局の藤村真喜氏

木質化の業界動向について発表する事務局の藤村真喜氏

住友林業が発表した、2041年に完成予定の高さ350m・地上70階の木造超高層建築について

住友林業が発表した、2041年に完成予定の高さ350m・地上70階の木造超高層建築について

木材を使うことが確実にカーボンニュートラルになるのかという点も話題になっており、本来の木材の使い方について見直されています。
それらは私たち地域工務店が以前から取り組み、信念を持って進めてきた対策に通じます。

あらゆるタイプの建築に木材が適しているわけではないことが理解され始め、正しい循環サイクルでなければカーボンニュートラルには繋がらないと示されています。
解体された木材を再利用する仕方が現在の課題点であり、今後技術的にも開発されていくのだろうと思います。

林野庁が公開しているパンフレット

林野庁が公開しているパンフレット

6月6日に開催したセミナーでアルセッド建築研究所の大倉氏に紹介いただきましたが、国が始動となって林野庁をはじめ様々な団体で支援ツールが作られています。
地域間での材料調達を促進するツールや、地域木材を利用した建築施工をどのような段取りで進めていけば良いのかなど、各種資料が揃っています。

森林がどのような経路で木材となり、解体され再利用・リサイクルされるのか、その後どのようにして森林に戻ってくるのか。
正しい循環サイクルを理解し実行できていることが、本当のカーボンニュートラルに繋がります。

相羽建設の現場共有〜具体事例〜未来提言

相羽建設の活動報告を行う協議会代表理事の相羽健太郎氏

相羽建設の活動報告を行う協議会代表理事の相羽健太郎氏

報告: 木造施設協議会 代表理事 相羽健太郎氏(相羽建設株式会社 代表取締役)

インフレの高止まりや収束の見えない円安が進む中、個人の新築住宅市場において閉塞感が強まり、地域工務店は各社の立ち位置や戦略が問われています。
そんな中、私たち相羽建設の戦略のひとつとして、「多角化」「法人向け・非住宅・木造施設」の事業化が挙げられます。

事例を挙げますと、2020年春 東京都立川市に新しい複合施設「GREEN SPRINGS」がオープンし、そこに集まる地域の人たちとの交流を深めるために定期的にマルシェイベントが計画されることになり、家具デザイナーの小泉誠さんにデザインいただき、相羽建設で製作している屋台を活用いただくことになりました。
初回の注文に続いて追加の発注もいただき、30台の屋台を納品しています。
多くの人が行き来する商業施設で、毎週のように木の屋台を用いて作家さんや農家さん、お店の皆さんが出店され、地域の景色になっています。

立川の話題のスポット「GREEN SPRINGS」で開催される「GREEN HOOP MARKET」にて屋台が活用されている

立川の話題のスポット「GREEN SPRINGS」で開催される「GREEN HOOP MARKET」にて屋台が活用されている

続いて、2021年7月に竣工した相羽建設本社オフィスリノベーション。事業再構築補助金を活用し、「木を扱う」という既存のコア技術を生かした新分野展開(オフィスリノベーション+加工機導入+ECサイト)に挑戦し、世界3大デザイン賞のひとつ「iF DESIGN AWARD2023」を受賞しました。
これをきっかけに法人顧客の増加に繋がっていると実感し、まずは身近なところから木造施設の実績をつくり、周知させていかなければならないと改めて認識できました。

相羽建設本社オフィス 2階ホール

相羽建設本社オフィス 2階ホール

相羽建設本社オフィス 紙の間 | 大切な契約など、紙を扱う部屋

相羽建設本社オフィス 紙の間 | 大切な契約など、紙を扱う部屋

相羽建設本社オフィス ワークスペース

相羽建設本社オフィス ワークスペース

2023年、東亜建設工業株式会社の神奈川県横浜市鶴見区に新たに建築された技術研究開発センター第2実験棟において、初めてのオフィス空間の木質化に取り組むことになり、小泉誠さんが空間や家具のデザイン・設計をし、相羽建設で木質化工事の施工を担当しました。
海洋ゼネコンとして大規模建築や倉庫・オフィスを建築してきた同社が、時代の要請の中で働く空間の木質化を考え、東京都新宿オゾンにあるMOCTIONを通じて相羽建設や小泉誠さんと出会い、この木質化計画が実現しました。

その過程では、相羽建設の本社オフィスを訪ねてくださり、同社の設計部長である福地部長が木をつかった空間に共感してくださり、「わざわ座」の活動(大工さんが住宅だけでなくテーブルなどの家具も作り、住む人に使ってもらうことで木の良さを伝える取組み)にもご参加くださいました。
東亜建設工業・小泉誠さん・相羽建設の3者による、たくさんの工夫と挑戦をし実現した、木質のオフィス空間となりました。

大会議室、窓ベンチやサイドテーブルは「わざわ座」のオリジナル家具(©️photo/Koizumi Studio)

大会議室、窓ベンチやサイドテーブルは「わざわ座」のオリジナル家具(©️photo/Koizumi Studio)

小会議室、トチの木のテーブル、ハンガーも木質化(©️photo/Koizumi Studio)

小会議室、トチの木のテーブル、ハンガーも木質化(©️photo/Koizumi Studio)

WEB会議室(©️photo/Koizumi Studio)

WEB会議室(©️photo/Koizumi Studio)

受付、垂木を使った鳥かごのような空間(©️photo/Koizumi Studio)

受付、垂木を使った鳥かごのような空間(©️photo/Koizumi Studio)

小泉さん最新作である杉の輪切り材を使ったテーブルと、小泉さんがはじめて作った杉の椅子(©️photo/Koizumi Studio)

小泉さん最新作である杉の輪切り材を使ったテーブルと、小泉さんがはじめて作った杉の椅子(©️photo/Koizumi Studio)

下記YouTubeで、小泉誠さんに東亜建設工業の空間紹介をしていただきました。
ぜひご覧ください!

文責:木造施設協議会事務局

木造施設協議会について