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【開催報告】木造施設協議会 2023年 年次総会+木造園舎・製材所 視察ツアー(3)|2023/7/21-22
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【開催報告】木造施設協議会 2023年 年次総会+木造園舎・製材所 視察ツアー(3)|2023/7/21-22

総合建築企業の木造事務所と日本で一番小さな JAS認定工場である製材工場を訪ねて

【開催報告】木造施設協議会 2023年 年次総会+木造園舎・製材所 視察ツアー(3)|2023/7/21-22

施設名:上林建設・しそうの森の木(兵庫県宍粟市)
話し手:上林建設株式会社 代表取締役 上林博幸氏・株式会社しそうの森の木 常務取締役 三渡保典氏

【開催報告】木造施設協議会 2023年 年次総会+木造園舎・製材所 視察ツアー(3)|2023/7/21-22

年次総会・視察ツアー報告の最終回である第3部では、上林建設の木造事務所、日本で一番小さなJAS認定工場「しそうの森の木・製材工場」へ伺った様子をまとめています。

地域に根付いた総合建築企業である上林建設の木造事務所、地域木材産業を支えるしそうの森の木が取り組まれている活動や、想いをお話いただきました。

上林建設株式会社の木造事務所

上林建設 事務所入口

上林建設 事務所入口

上林建設では、上林社長と長年親交のある山弘の三渡社長より、同社の木造事務所や地域に開いた「まちライブラリー@宍粟」をご案内いただきました。

上林建設は兵庫県播磨地域で創業90年であり、地域に根付きながら企業の事務所や工場、医療・介護施設など、さまざまな建物を建築している総合建築企業です。

ご紹介してくださる代表取締役の上林博幸氏

ご紹介してくださる代表取締役の上林博幸氏

天井や開口が広く、階段も圧迫感を感じずゆったりとした空間

天井や開口が広く、階段も圧迫感を感じずゆったりとした空間

近年は広い視野でまちづくりの実現を考えるため、複数の医療機関を1箇所に集めた医療モールや、高齢者が住み慣れた地域で自分らしく暮らせるサービス付き高齢者住宅の建設、さらに企業の工場誘致など地域のまちづくりにも挑戦されています。

事務所2階の休憩スペース、小上がりの畳もありゆっくり過ごせます

事務所2階の休憩スペース、小上がりの畳もありゆっくり過ごせます

山弘のグループ会社、しそうの森の木

しそうの森の木 常務取締役の三渡保典氏

しそうの森の木 常務取締役の三渡保典氏

最後に、「こども園 宍粟わかば」を施工した(株)山弘のグループ会社であり、日本で一番小さなJAS認定工場の「しそうの森の木」へ伺いました。

こちらではプレカット工場に加えて製材工場が新設され、原木の仕入れから乾燥、製材、仕上げ、プレカットまで自社の一気通貫で行っています。
流通の構造を簡素化することで低コストかつ高品質な県産木材製品の供給を担われ、宍粟わかばでも地域木材として多く使われました。

しそうの森の木では基本的に住宅向け木材の市場に向けた製材をされているそうですが、年々店舗や宍粟わかばのような保育施設といった非住宅分野の受注が増えていると三渡氏は仰います。
木造施設の需要は年々増え、地域工務店はそこに対応していくべき。
そのために必要な材が必要な分だけ手に入れることができる環境を提供していくのが自分たちの役目であり、建材をつくる力、プレカットの力、製材を細かくできる力、この3つの要素を活かして非住宅分野に取り組んでいると語ってくださいました。

しそうの森の木には大工さんが常駐され「プレカット+手刻み」で木材が加工されます。
そのため、非住宅のような複雑な骨組みにも対応できる力があり、宍粟わかばの樹状トラスや大径柱には伝統的な継ぎ手が使われています。

土場

土場

真空乾燥機、日本に10機しかなうちの1つ

真空乾燥機、日本に10機しかなうちの1つ

しそうの森の木を立ち上げるにあたり、三渡氏が最も力を注いだのが土場。
地面に5mのH鋼が立ち上がり、常に最上部まで木材が積み上がっています。
この方法だと1,000立米の丸太を備蓄することができ、急な受注でも即納に対応できると仰います。
アーム付きユンボで高く積み上がった丸太を降ろして選木機に回す、小さいながらも原木の市場のような機能が自社にあることが大きな特徴だと説明してくださいました。

芯持ち材の表面割れを抑制する方法としてドライングセットという処理が必要になります。
長時間に渡り高温で乾燥させるとどうしても木材が酸化し茶色くなってしまうのですが、こちらの乾燥機は機内が真空で酸素がないため、木材が酸化しない特徴があります。
そのため、天然乾燥のような木本来の色合いを持つ木材の提供が可能となっています。

大径材から木取りした杉柾3層クロスパネルの見本

大径材から木取りした杉柾3層クロスパネルの見本

倉庫の建具

倉庫の建具

しそうの森の木オリジナルの杉柾3層クロスパネルは、大径材の木取りでつくられた幅はぎ材を積層してつくられています。

柾目の良いところとして「主張が少ないこと」が挙げられ、宍粟わかばの造作材に多く使われています。
上品な仕上がりで、洋風・和風どちらの意匠設計でも使いやすいと三澤氏は仰います。
建具にした際も木材が反ることがなく、Ms建築設計事務所の多くの案件で用いられているそうです。

2日間を通して

木造施設の現在のトレンドや今後のビジョンを共有する貴重な会となりました。
各社の発表や視察ツアーを通して、地域木材を使うメリットや地域工務店が担っていく木造施設の重要性について改めて共通認識できたのではないでしょうか。
コロナ禍を超え、対面で開催できたことも嬉しく思います。

外部環境の変化に呑まれず地域工務店の資源を最大限活用し、仲間と共に連携・協働することによって、新たな事業に取り組むことで新しい業態を構築し、地域にとってなくてはならない存在であり続けましょう。

今後も木造施設協議会として、会員メンバーや事業者・行政の皆様と連携をして、地域の木造施設の情報発信を進めるとともに新たな技術開発や協働に取り組んでいきます。協議会の活動にご興味をお持ちの方はぜひ事務局までお問い合わせください。

参加くださった皆様と

参加くださった皆様と

文責:木造施設協議会事務局

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