オピニオン
先進的福祉サービスと建築の居心地でつながる効果(2)
施設名:トータスフォレスト(栃木県)
話し手:社会福祉法人幸知会 佐藤昌親氏
トータスフォレストの建設経緯
トータスフォレストの建設に至った経緯は以下になる。
宇都宮市内の放課後デイがほぼ満床になり同事業の2店舗目を構想したが、田舎の空きテナントが少なく見つからなかった。
そこで新築構想がでて協力企業所有の資材置き場になっていた土地が候補になる。中山先生から複数事業を行える面積と提案を受け、他にも構想としてあったリハビリだけのデイサービス(預かりではない)と、事業所内保育所が満員である課題から保育事業も組み込んだ。
介護、障がいの隔たりをなくすという世の中の動きがあり、平成27年度の介護保険報酬改定で、「住み慣れた地域で自分らしい生活が続けられるようにする」という地域包括ケアシステムの構築に向けた取り組みをするという方針がでた。そこでトータスフォレストは介護と障がいを組み合わせた施設になった。
印象の良さと圧倒的稼働率の高さ
ケアマネージャーの反応は、はじめデイサービスとは思わずおしゃれなレストランだと思ったという反応があった。
歩行特化型介護事業(アルクル)は近隣の一般的には新規が5件/月あればかなりいいところなのに対してオープン以来満員になるまで毎月10件以上。一般的な近隣事業所は稼働率65~75%がよいところだが95%、キャンセル待ちもでている。
障がい(トータスジュニア下野)はオープン前で普通は一桁代のところ5割予約が入った。月の稼働率は一般的な近隣事業所では80~100%だがジュニア下野は125%。全曜日キャンセル待ち。オープン3,4カ月で満員。保育事業も満員。
障がい事業は集中が難しい子どもたちがいるので短時間できりかえるプログラムしていて3カ月通うと学校や自宅で変化がでてくる子供が多い。保育事業は幼稚園に入るまでの2歳以下を預かっていてお年寄りとのふれあいがある。それがデイサービスのお年寄りが通いたくなっている理由のひとつになっている。環境は気に入ってもらっている。足元も寒くないし明るい。運動効果としても末端の冷えと効果は影響する。フィットネスクラブのようで老人ホームみたいでないのがよい。
利用者の声
放課後デイは中が広くて体が動かせるのがよい。目線が気になって集中できない子どもが多いので下半分だけ曇りガラスになっている配慮があって良い。保護者は障がい者施設っぽくなくて、雰囲気がおしゃれでよかったという声がある。
保育は床が暖かいのが良い、窓が大きく電車が見えるのが良い。高齢者や小学生と交流できるのが良い。人見知りがなくなってきたという声もある。
県の担当者からも高評価。県としてすすめていきたい形であると監査で言われている。
スタッフの声
日当たりがよい。雰囲気が明るくて意欲が継続しやすい。足元が冷たくないのがよい。鉄筋コンクリートの固いイメージではなく温かみがある。お客さんからの評判がよい。保育スタッフからも、エアコンで床が温めにくいことに苦労していたがOMソーラーの床があたたかいのが良い環境であるという声がある。放課後デイのスタッフもエアコン最小限がよいと言っている。
木造施設とOMソーラーと太陽光発電
運用して良かったことは
① 木造施設のあたたかみ、雰囲気。
② コスパがよい。(運営)
③ 足元が温かい。(健康、運動効果アップ)
④ 施設っぽさがない、鉄筋コンクリートの施設のイメージの四角くない。
⑤ 日本人は木がすき。
昨年、2施設目でトータスラフォーレ開業。放課後デイサービスと就労継続支援B型の2事業所を含む。
福祉業界の抱える課題
福祉は閉鎖的で数字じゃない、営業意識が低いという業界。
幸知会では
①時代にあったサービス。
②職員の確保 求人、育成、定着、外国人
③経営力(営業力、採算の常識)
を大事にしている。
近年保育事業は増えてきて、2025年に必要数を供給数が上回る。あと5~6年は供給不足が言われている一方でそこまでが保育事業の伸びしろかと言われている。
<参考>
介護保険デイサービスのニーズ ①短時間②リハビリ⑥成果
文責:木造施設協議会
建築写真※:藤本一貴