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木でつくる子供の環境(2)
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木でつくる子供の環境(2)

地域の木材を活用した保育・福祉施設と健康を考えるセミナーin東京 でのご講演より

木でつくる子供の環境(2)

話し手:袴田喜夫建築設計室代表 袴田喜夫

木でつくる子供の環境(2)

第2回では小さな地域の公共施設という視点、子どもの空間、大人の空間のスケールの視点から木造のメリットは何なのかについて具体的な事例を交えながらお話いただきました。

地域の小さな公共施設として

続いて「子供の空間、大人の空間」、「地域の小さな公共施設」だという事について少し事例を交えながら説明したいと思います。
ご紹介するのは4月に着工する新しい保育園です。敷地は世田谷区の代沢で昔からの住宅地です。井の頭線が走っていてここに駒場東大があります。古くからの住宅地の中に保育園を作る、それだけで地域にとってはものすごいストレスだと思います。もともと地主さんの母屋があった土地でお庭があって傾斜になっていてとても良い木があります。その母屋が取り壊されて更地になっている敷地です。こういうところに保育園をつくろうとしたときに鉄骨造や鉄筋コンクリート造でつくるという事は大変なことです。地域に受け入れられる小さな公共施設、周りの家となるべく違和感のない建物にしたい、それで私たちは木造でつくることにしました。

子どもの空間、大人の空間

延べ面積600㎡位で一部2階建ての保育園です。定員が63名です。三角形で高低差のある敷地にどのように保育園を配置するか悩みました。昔の庭の北側の斜面の木は全部残そうと考えました。また、保育園は家なので見え隠れするような空間をつくりたいと考えました。見通しが良いと保育士さんにとっては楽ですが、子供にはストレスになることがある。家の中でもお庭でも見えたり隠れたり、隠れているようだけれども見えている、なんといっても子供がワクワクするような場所を作りたいと思います。

見え隠れする子どもの隠れ家

見え隠れする子どもの隠れ家

絵本コーナーの小さな空間

絵本コーナーの小さな空間

端っこの静かで隠れているところ、一番広い平らなところ、斜面の森の中のようなところ、建物の間のデッキのテラス、2階のルーフテラスといろいろな外部空間を考えました。内部はホールのような広いスペースをなんとなく3つに分けて、全部まとめて使ったり、ふたつつなげて使ったり、それぞれ分けて使ったりできるように考えました。幼児のロッカーはジャングルジムのような場所、各保育室にはくびれを作って、大きなスペースとちょっと隠れるようなスペースを作りました。さらに小さな空間をいろいろなところに作りました。森の中のアトリエ、絵本コーナー、階段の踊り場の下で中に潜り込んでくるような場所です。
子供のための小さな空間があると子供が喜んで入っていくのですね。保育園の中に随所にこのような場所を作りたいと思っています。子供にとっては先生の来ない場所、それで子供たちは落ち着いていると怪我はしないし、先生たちもなんとなく見えて安心できる、そんな見え隠れするような空間ができたらと思っています。

1階平面図 青丸、オレンジ丸、黄丸は大、中、小の空間を示す

1階平面図 青丸、オレンジ丸、黄丸は大、中、小の空間を示す

園長先生が大切にしたのは大人の空間です。2階の庭に面して一番園庭が見渡せるところに畳の作業室と園長先生の部屋、仕切ることができる3畳間、窓も大きくあけて、大人がくつろげるスペースを作りました。外部空間からテラスに繋がって保育室があってそれにそれぞれ小さな空間がついている。このような空間は、木造が1番つくりやすいと思っています。

2階平面図

2階平面図

会場・協力:まつぼっくり保育園(運営:社会福祉法人 松栄福祉会)

図、写真:袴田喜夫建築設計室提供

文責:木造施設協議会事務局

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