オピニオン
先進的福祉サービスと建築の居心地でつながる効果(1)
施設名:トータスフォレスト(栃木県)
話し手:社会福祉法人幸知会 佐藤昌親氏
木造施設協議会では中小木造施設は保育に加えて福祉がターゲットではないかと考えてきました。今回は栃木県トータスフォレストから社会福祉法人幸知会の佐藤営業部長と設計者の中山大輔さんからお話を伺いました。こちらはその記録になります。
社会福祉法人幸知会の紹介
法人としての歴史は特別養護老人ホームとデイサービスと在宅介護、ホームヘルプから始めて事業拡大してきた。平成29年にトータスフォレストを開設し、デイサービス、障がい児事業、保育事業の3事業の複合施設になる。
小規模で発達障がい等の児童向けの事業が増えている。介護、障がい、保育の3つの事業をなした施設がトータスフォレスト。
ミャンマー人技能実習生として受け入れたのが日本で初めてとして取り上げられるなど、テレビ、新聞に取り上げられている。船井総研で、人材の定着率、新規採用、10時間勤務制の成功事例として発表して2018年MVP賞をもらった。翌年は職員にアンケートをとって働いている満足度が高かったので組織力診断対象を含めて3部門受賞。トータスフォレストは用途の部分でも先進的で素晴らしいという評価をもらい、グッドデザイン賞、マロニエ建築賞を受賞した。
ニーズに合わせて「変わり続けていく」
福祉業界からの見学が県内外合わせて60社以上。小さな町の大きくない法人で、トータスの特徴は「変わり続けていく」ということが自慢できるところ。栃木は保守的だが、法人ができてから25年で同じことをしても喜んでもらえないことがわかっているためだ。年代の違いが大きい。
2000年に始まった介護保険制度は利用者自身がサービスを選べる制度だが、どこの事業所も建物も含めて同じサービスをしてどこも同じで何を基準に選べばよいのか、というのが現状。重度も軽度も同じ場所で体操しているような施設はまだまだ多い。
<行きたくない理由>
暇、童謡など幼稚、送迎車が明らかに老人ホーム。
<行きたい理由>
運動、リハビリ、認知症予防や進行をとめることや短時間利用。
→特色のあるサービスをしなくては!
幸知会では幹部職員を中心に頻繁に研修にでている。研修に行ってから72時間以内に何かひとつでも自分の事業所に取り入れて何かを始めることにしている。都会に研修に行く理由は都会は競争が激しいので高齢者や子供に効果があるサービスの情報が早いし多い。
利用者が求めるもの、気を付けている環境づくり
<高齢者、子供、家族が施設に求めるもの>
①改善に効果がある受けたいサービス内容
②施設っぽくない
③居心地の良い環境
→実現していくためには環境や建物の影響が大きい
<施設っぽくないようにするために気をつけている環境づくり>
①雰囲気を崩さない
掲示物は一定の場所を定める。べたべたはると小学校みたいになる。小物は安い蛍光色のようなものは置かない。
②施設の大きな看板はださない。
門に事業所名が大きくなく書くのみ。通う方が恥ずかしくないように配慮している。
③送迎車
法人名や事業所名は本当に必要なのかと考えて、乗る人の気持ちになれば偏見をつくってしまうので昔とは変えて無地の普通車やロゴだけ入った車にしている。
施設っぽくない居心地の良い場所にし続けるためには「建物・環境」とサービス内容の両面が大切だと考えている。
文責:木造施設協議会